ヨーロッパの一流品ブランドが持っていた基本思想

2011-05-17

まず昨今のブランドビジネスの構造的変化にふれる前に、そもそもヨーロッパにおける一流ブランドというものの基本について考えてみたいと思います。中世ヨーロッパに誕生した手工業ギルドを軸にして発展した職人達の匠の技は、物作りに対するベクトルを“量よりも質”へと向かわせることになり、特に一流ブランドとされる商品は伝統と格式を何よりも重んじる“貴族財”として保護されてきたんです。革小物やバッグ、宝飾系のブランドにおいては創業者の子孫が代々受け継ぐという“血筋の系譜を重んじる”ファミリー・ビジネスが基本。また有名ファッションブランドではデザイナー自身が社長として経営にあたるか、創業当時からのビジネスパートナーとの二人三脚で同族経営に近い形態を取るというのが一般的でした。商品のクオリティと貴族財としてのロイヤリティを守る結果として、少量生産ながら利潤を得るという用心深い経営方針のもとで長年ステイタスを維持してきたわけです。たとえていうならば頑固なオヤジが店の暖簾を守っている老舗のせんべい屋みたいなものですか。「ウチは代々伝わってきた秘伝のタレを塗って一枚一枚丹念に備長炭で手焼きしてるから、一日に百枚しか売れねえんでい」的な経営哲学。本当に王侯貴族や特権階級のブルジョワジーだけを相手に商売していた時代ならば、それでも充分に通用する世界だったのでしょう。また、そうした生産量の少なさが商品の希少性へと結びついて一流有名ブランドならではのステイタスを築けたわけです。ところが時代が20世紀に入り、80年代にもなると、こうした旧態依然とした経営方針が徐々に時代と合わなくなってきます。有名ブランドの多くが、表向きは伝統と格式を誇る体裁だけは取りつくろっていても、内情は体質改善をしない限り火の車というお家事情を抱え込んでいたんです。そんなファッションービジネス界に彗星のごとく現れ、こうした一流ブランドを世界的規模に再構築したひとりの天才ビジネスマンが登場するのです。