ちょっとした行き違いから、夫婦は決定的な不和になることがある。他人と他人の結びつきの中ではもっとも近い関係になる結婚では、近いがためにかえって、わずかな行き違いもがまんのできない苦痛となり、相手への不信となる。結婚を「契約」としてとらえたほうがいい大きな理由がここにある。一組の男女が結婚するということは、それぞれがどういう権利と義務をもつかということを明確にし、合意に至るということである。二人がお互いの権利を確保しようと思えば、そのために必要となる義務を負わなければならない。義務の中には、当人にとって多少重荷になることも、多少不愉快を伴うことも含まれてくる。それがどうしても嫌なことなら、契約は成り立たない。契約として整った結婚は、夫婦それぞれが一定の権利を確保し、一定の義務を分担し合うことで未然に行き違いを防ぎ、結婚生活をスムーズに進めるものである。たとえしたくないことでも、しなければならないことが結婚ではたくさんある。そのことをあらかじめ約束しておく。はじめに約束したとおりの権利と義務さえ遂行すれば、結婚生活が崩壊することはまずない。この安定性に、結婚を契約として割り切るよさがある。