東大タリウム殺人事件

2011-03-23

日本ではどうか。一九九一年二月、東大医学部付属動物実験施設の技官が死亡し、九三年になってから被害者の同僚が逮捕された。これが東大タリウム殺人事件である。当時の週刊誌によれば、被害者の技官は中古車の売買を副業にしていて、職場の電話をよく使っていた。犯人はそのことに腹を立て、細菌検査用の酢酸タリウムをコーヒー豆に混入したとのことである。さらにこの東大タリウム事件のヒントになったといわれている事件がある。一九八一年の福岡大学タリウム中毒事件である。福岡大学医学部付属病院の臨床検査部の技師八人がタリウム中毒にかかり、うちのひとりは髪の毛が大量に抜けたり、手足が腫れたりして重症となり、長期の入院を余儀なくされたというものである。やはりこの臨床検査部にも細菌検査用の酢酸タリウムが保管されており、どうやら誰かがお茶やコーヒーに長期に渡ってタリウムを入れていたと見られている。警察もかなり力を入れて犯人を捜索していたが、検査技師のひとりが、自分は犯人を知っているが名は言えないという遺書を残して自殺してしまい、謎は謎のまま残されてしまった。しかし、これらの事件の犯人はなぜタリウムをあえて選んだのだろう。やはり一般に馴染みがなく、症状の数が多いことから、なにかほかの病気に見せかけられるとでも思ったのだろうか。それとも、ひょっとしたら毛が抜けるという四谷怪談以来の猟奇的なイメージがある毒物であるところが、陰湿な犯罪にはふさわしいと犯人たちが考えたのかもしれない。そういえば、アメリカのCIAが、キューバのカストロ将軍に手を焼いていたころ、彼の靴のなかに硫酸タリウムを仕込むという作戦をたてていたという話がある。結局実行されなかったのだが、タリウムの毒性でカストロをハゲさせ、彼のカリスマ性をなくさせようというモクロミだったという。どこか間の抜けた陰謀で、真偽のほどはあまり定かではない。

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